導入事例 2026年3月19日 12分

鍼灸院の導入事例 ― 予約・問診・カルテ・経営分析を1つのシステムに統合

完全紹介制の鍼灸院が抱えていた予約管理・問診・顧客管理の課題をシステムで解決。紹介制度のデジタル化からAIカルテ自動生成、経営ダッシュボード、AIレコメンド+LINE自動配信まで、段階的な導入の流れと成果を紹介します。

松井 優知
松井 優知
株式会社Livspect 代表取締役

オーナー1人で回す鍼灸院が、売上の構造を「見える化」するまで

東京・代々木の完全紹介制鍼灸院「 sukunabikona鍼灸院 」。オーナー1名で施術から経営まですべてをこなしていました。

毎日予約の確認に追われ、カルテは手書き、紹介してくれたお客様が誰なのかもわからない。忙しいのに、何を改善すれば利益が伸びるのかが見えない — そんな状態からのスタートでした。

専用アプリ + Webサイト + 管理ダッシュボード + AI分析基盤を段階的に導入した結果、1日15分の管理作業を削減し、カルテ作成時間を半減。経営状態を毎日30秒で把握できるようになりました。

導入前後の変化を先にお見せします。

領域導入前導入後
紹介管理口頭で「LINE に連絡して」紹介コードで自動追跡・可視化
予約管理SaaS + Google カレンダーの二重管理アプリ予約 → カレンダー自動連携
問診・カルテ紙 or バラバラのメモアプリで事前問診 → AI が SOAP カルテ自動生成
経営判断Firestore コンソールを直接確認ダッシュボードで KPI・売上・リテンションを即時把握
顧客フォロー勘と記憶に頼るAI が顧客データを分析し、空き枠案内やフォローメッセージを LINE で自動配信
月額コスト約1万円(SaaS 合計)約1万円(自社システム保守)

背景:完全紹介制の鍼灸院が抱えていた課題

sukunabikona鍼灸院は、施術者がオーナー1名の小規模な完全紹介制鍼灸院です。鍼灸・整体・アロマを組み合わせたオーダーメイド施術で、舞台役者や経営者など身体のパフォーマンスを重視する顧客を中心に施術を提供しています。

紹介制という特殊なビジネスモデルゆえに、汎用SaaSでは対応しきれない課題がありました。

課題1:紹介の流れが見えない

既存患者が新規を紹介する際、「公式LINEに連絡してね」と口頭で伝えるだけ。誰が誰を紹介したかのデータが一切残らず、ロイヤルカスタマーが誰なのかも把握できていませんでした。

課題2:予約管理が二重になっている

月額約1万円のSaaSを使っていましたが、結局Googleカレンダーも並行して確認する必要があり、ツールが増えるほど手間も増える状態に。

課題3:問診・カルテがつながっていない

問診票は紙、施術メモはバラバラのメモアプリ。顧客ごとの施術履歴を追うのに毎回探す手間がかかり、過去の症状の経過を把握しにくい状況でした。

課題4:データはあるのに活用できない

来院頻度や離脱傾向、紹介の効果などを知りたくても、数字を見る手段がない。感覚的な経営判断に頼らざるを得ませんでした。

アプローチ:3段階で段階的にシステム化

一気に全てを作るのではなく、業務への影響が大きい順に3段階で導入しました。

Phase 1:専用アプリ — 予約・問診・紹介を1つに

紹介コードで「口コミ」をデジタル化

既存患者にユニークな紹介コードを発行。新規患者はアプリダウンロード時にコードを入力して登録します。

これにより、誰が何人紹介したかがデータとして蓄積されるようになりました。

Google カレンダー連携で二重管理を解消

患者がアプリから予約を入れると、Google カレンダーに自動で反映されます。

ポイント: 既に使い慣れている Google カレンダーを活かし、新しいツールの学習コストをゼロにしました。

事前問診票 + AI カルテ自動生成

アプリから来院前に問診票を送信。施術後のメモと合わせて、SOAP 形式のカルテを AI(Gemini)が自動生成します。

SOAP内容データソース
S 主観的情報患者の主訴・体調問診票(体の不調部位マップ含む)から自動取得
O 客観的情報施術者の所見・施術内容施術者が音声入力
A 評価施術後の変化AI が S + O から生成
P 計画次回の方針AI が提案、施術者が確認
施術者は音声でメモを残すだけ。問診票のデータと組み合わせて、AIが構造化されたカルテを自動で作成します。

Phase 2:Web サイト — 公開サイト + SEO/LLMO

公式 Web サイトを React + Vite で構築。一般的な SEO に加えて、LLM 向けの最適化(LLMO)も実施しました。

  • llms.txt / llms-full.txt を配置し、ChatGPT や Claude などの AI アシスタントが院の情報を正確に回答できるようにした
  • JSON-LD(MedicalClinic)で構造化データを埋め込み

Phase 3:管理ダッシュボード — 数字で経営を見る

ここが今回の導入で最も大きな価値を生んだ部分です。

オーナー専用の管理ダッシュボードを構築。認証で保護されており、外部からはアクセスできません。

ダッシュボードで見えるようになったこと

売上の構造が分かる

売上 = 客数 × 購買率 × 客単価

この公式を常に表示し、どの要素に改善余地があるかを一目で把握できるようにしました。

  • 客数 — 1回以上来院した顧客数
  • 購買率 — 過去3ヶ月平均で、ひと月に何割の顧客が来院したか
  • 客単価 — 過去3ヶ月の予約コース料金の平均

購買率と客単価は過去3ヶ月の実績から算出するため、月初でも安定した予測値が表示されます。当月の確定売上(予約ベース)と予測の達成率もあわせて表示。

6 つの KPI で健康状態を診断

各指標に自動診断(OK / 注意 / 要対応)が付与され、前月比の増減も表示。数字の意味が分からなくても、色で状態が分かるようにしています。

KPI見ているもの診断基準
月間予約数集客力前月比で判定
キャンセル率予約の確度10%以下 → OK、15%超 → 要対応
オーガニック紹介数口コミの健全性アンバサダー除外した純粋な紹介数
Web アクティブユーザーサイトへの関心GA4 連携
休眠顧客数リテンション60日以上未来院の顧客数

リテンションを RFM で可視化

顧客を RFM(Recency / Frequency)ベースの 5 セグメントに自動分類し、それぞれに推奨アクションを表示。

セグメント条件推奨アクション
ロイヤル最近来院 + 高頻度感謝・紹介依頼・アップセル
有望新規最近来院 + 低頻度2回目来院促進
要注意やや前 + 中頻度リエンゲージ
離脱リスク前 + 低頻度緊急フォロー
休眠長期未来院復帰キャンペーン

コホート分析で「定着率」を追跡

初来院月ごとにグループ化し、N ヶ月後に何%がリピートしたかをヒートマップで表示。どの月に来た新規客が定着しているかが一目で分かります。

紹介ネットワークを可視化

紹介関係を D3.js のフォースグラフで可視化。誰が紹介のハブになっているか、紹介の連鎖がどう広がっているかが直感的に分かります。

AI レコメンド + LINE 配信:「次に何をすべきか」を自動で提案・実行

ダッシュボードで数字が見えるだけでは、行動に移せない。そこで、AI(Gemini 2.5 Pro)が顧客データを分析し、個別のネクストアクションを自動生成。さらに LINE と連携し、メッセージの送信まで自動化しました。

AIレコメンド

  1. 対象ユーザーを自動抽出 — RFM セグメント(5分類 + 低評価)をもとに優先度を判定
  2. 顧客データを収集 — 直近の来院コース、最新のカルテ(SOAP)、問診票の主訴、来院パターン
  3. AI がメッセージ文案を生成 — カルテの内容を踏まえた、自然な体調伺いのメッセージ

空き枠の自動配信

予約の空きが多い日を検出し、しばらく来院されていない方に空き枠の案内を LINE で自動送信します。

  • 翌日〜3日後の空き率が一定以上の場合に配信
  • 最終来院から2週間以上経過した LINE 連携済みの顧客が対象
  • 再来院するまで1回のみ送信(しつこくならない設計)
  • 空き枠は「曜日+時間帯」でざっくり案内し、具体的な予約はアプリから

実際に生成されるメッセージの例

福田です。その後、肩や腰の調子はいかがですか?前回だいぶ張りが強かったので気になっておりました。
今週の木曜・金曜の午後にまだ空きがございますので、よければまたお身体のメンテナンスにいらしてください。
ご予約はアプリからお願いいたします。

ポイントは、コース名や料金を一切出さないこと。営業感のない、体調を気遣う自然な文面を AI が生成します。

配信の設計思想

  • 既に未対応のレコメンドがある顧客はスキップ
  • 空き枠案内は再来院するまで1回のみ(再来院でリセット)
  • 登録のみで来院がない方には月1回の季節のお知らせを配信
  • 毎日 04:30 に自動生成 + ダッシュボードから手動生成も可能

技術構成

レイヤー技術役割
モバイルアプリFlutter (iOS / Android)患者の予約・問診・紹介
Web サイトReact + Vite + Tailwind CSS公開サイト + 管理ダッシュボード
バックエンドFirebase Cloud FunctionsAPI・スケジュールタスク・トリガー
AIVertex AI (Gemini 2.5 Pro)カルテ自動生成・レコメンド生成
データベースCloud Firestore全データの永続化
分析Google Analytics 4Web アクセス指標
チャートRecharts + D3.jsダッシュボードの可視化

コード分割によるパフォーマンス最適化

ダッシュボードは React.lazy で遅延読み込み。一般ユーザーがアクセスする公開サイトのバンドルに、ダッシュボードのコード(Recharts, D3.js 等)は一切含まれません。

費用

項目費用
アプリ構築(iOS・Android)30万円〜
Web + ダッシュボード構築10万円〜
月額保守(サーバー・AI・アップデート込み)約1万円/月
以前 SaaS に支払っていた月額とほぼ同額で、予約・問診・カルテ・紹介管理・経営分析・AI レコメンドのすべてを含む自社専用システムを運用しています。

成果まとめ

業務効率

  • 予約の二重確認がなくなり、1日あたり約15分の管理作業を削減
  • カルテ作成が音声入力 + AI 自動生成で、1件あたりの記録時間が半減
  • 問診票がアプリで事前送信されるため、来院時の問診時間が短縮

データ活用

  • 紹介コードにより、口コミの流れが数字で可視化
  • KPI ダッシュボードで、経営状態を毎日30秒で把握
  • RFM 分析とコホート分析で、リテンション施策の優先順位が明確に

顧客フォロー

  • AI レコメンドが休眠リスクの顧客を自動検出し、フォロー漏れを防止
  • 空き枠がある日にはLINEで自動案内、来院のきっかけを作る
  • カルテに基づいたパーソナライズされたメッセージで、患者との関係性を維持

この事例のポイント

  1. 今のやり方を活かす — Google カレンダーや現地決済など、うまく回っているものはそのまま残し、負担が大きい部分だけを改善
  2. バラバラの情報を1つにまとめる — 予約・問診・カルテ・紹介が1箇所に集まることで、全体像が見えるようになる
  3. 少しずつ始められる — まずアプリで日常業務を楽に → Webで集客基盤 → ダッシュボードで経営の見える化と、効果を実感しながら段階的に拡張
  4. AIが「次に何をすべきか」を自動で実行 — 数字を見せるだけでなく、空き枠案内やフォローメッセージの生成からLINE配信まで自動化。見て終わりではなく、システムが行動する

「毎日忙しいのに、利益が伸びない」と感じている方は、まずは現状の業務フローを見える化するところから始めてみてください。60分のヒアリングで、すぐに改善できるポイントを無料でお伝えします。

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